あいつの意志も知らない俺たちは、勝手に何かを言うことはできない。


「やだね。何でお前の言うことを聞かなきゃなんねぇんだよ」


そうだそうだ!


なんて言えるわけはないけど、そんな気持ちで陽を応援する。


「俺には金持ちの世界は知らねぇし、関係もねぇ。だから、従わねぇ」


たまにははっきりしたことを言うもんだ。

しっかり俺たちのリーダーだ。


「……お金、あげるとかそんな昼ドラまたいな展開はないから安心してよ」


まぁあっても困るけどね。


「でも、最後の忠告。亜美は俺のだから。お前らになんか渡さねぇ」


最後の言葉に、大翔はゾッとした。
背中に寒気が走る。


「亜美は物じゃねえ。亜美が、亜美の意志で俺たちから離れるなら、俺は何もいわねぇよ」


その陽の言葉に、大雅も頷く。


亜美の意志。


それが、“別れ”なら、俺たちは何も言わないだろう。なんて言ったけど、多分穏やかには別れられないだろうな。


“嘘だ”と言って信じない奴が大半だろうな。

陽だってきっと――


「亜美の意志、ねぇ――亜美の事を知らない奴らがそんなことを言えるなんて、驚きだな」