大翔はだんだん落ち着いてきた頭をものすごくはやく稼動した。


……結局、この人に勝てるわけが無い


って考えにいたって考える事をやめたわけですけどね。


「陽、悪いな。金井さん、汚いとこで悪いですけど、座ってください」


はじめは陽に向けた。
この部屋は陽が中心だから。だけど、その中心である陽に初めて意見を聞かず無理矢理金井武を部屋に入れた。


亜美のときはなぜか最初から部屋に入ることに抵抗を見せなかった。


だから比較的早くみんなが亜美に懐いたわけだ。


「んじゃ、遠慮なく」


ほんとに何の遠慮もなく、金井武はいつも亜美が座る位置に知ってか知らずか座った。


それがまた陽の機嫌を逆撫でする。


「まず、何から話そうか」


金井武の動作は全てにおいて優雅で繊細だ。


大翔もそれなりのところでは振る舞いには気を付ける。


それでもこんなに優雅には振る舞えない。


ましてや、こんな一般人の一般人の自分達を目の前にしているというのに全く隙がない。


ブレない。


――これが、見られているということ


外に出たら、いつも誰かに見られているということ。