「は?」
陽の声音が不満をもらしている。
「いい判断だね。あー、思い出した。君、斎藤さんとこの次男か」
ドキッとした。
このドキッが、胸のトキメキならどれだけよかっただろう。
「俺……僕のことが分かるんですか?」
あわてて言い直した。緊張で手に汗が滲んできた。心なしか声も震えているような気がする。
「まぁ、そりゃこの世界長いからね」
苦笑いをした金井武。
「今日は何でいきなり……」
大翔が言いたいのは、聞きたいのは、答えてほしいのは1つだけ。
“何でここにいるのか”
だった。
この場所は、金井武のような人物が来るような場所ではない。
普通なら亜美もその分類に入る。
「亜美、しかないでしょ。俺たち共通の話題といえば」
ですよね。
嫌な予感が的中した。
完璧になんかあるな。
それも、俺たちじゃどうにもならないようなこと。
金井武はただ言いに来ただけなんだ。はじめから俺たちの意見なんか聞く耳持ってない。ただ、俺たちは金井武の出す条件に頷かされかかってるんだ。
多分。
確証は無いけど、そんな気がした。



