隆とは父親の名前。
結構立派な名前をもらった割に、身長はあまり大きくないし、顔もかっこいいよりかわいい系統。
わが父ながら見ていてイラつく。
「おはよう、父さん」
「おっはよう!亜美!」
朝からテンションたけーよ。
父の言葉には何も反応せず、亜美は所定の位置に座った。
特に食事中に会話があるわけではない。
だからといって覚めているわけでもない。
話しても会社の事ばかり。
ようするに、何を話したらいいのか分からないのだ。
昔から忙しかったもんだから、話すことが少なすぎて、話せるときにどうしたらいいのかお互いわからないだけ。
だから無言、もしくは、仕事の話が一番しっくりくる会話なのだった。
「そういえば、瑠伊が帰ってくるらしいぞ」
それを聞いてぞっとした。
――瑠伊が帰ってくる
それが意味するのは、亜美の平和で、かつ、楽しい日常の破壊もしくは破滅を意味する。



