なんだかんだ言って、あたしが言わない裏の事情とかを察してくれるのは佐伯さんだけかもしれない。
「ちょっと頑張ってくるよ」
「隆さんが起きられたら朝食なので呼びに行きます」
「うん、お願い」
そう言いながらすでに体は部屋の方を向いていた。
部屋に入った亜美を見つめながら、佐伯が悲しそうな表情をしているとも知らずに。
「亜美さん、私は……俺はあなたを嫌ってなんて無いんですよ」
亜美に残された一年。
その理由を佐伯も知っている。
ほかに、亜美が“忘れよう”、“無かったことにしよう”として完全に記憶から消し去ったことも佐伯は知っている。
亜美から聞いたわけではないが。
それを知っているからこそ、みんな彼女を大事に扱うのだ。
そんなこと、知らなくたって誰にでも愛されるような性格はしている。
これから亜美に襲い掛かるであろう運命は、彼女には重すぎるのかもしれなかった。
だから、最後まで私は亜美さんのお側に。
「私はいつまでもあなた様の味方です」



