とにかく今は殴ってもらうことが第一目標なわけだから……


「いいから殴って!」


「いっきまーす」


ドスッ



佐伯さん……速い。


ってか“いっきまーす”って何?


「あ、すいません。つい本気で……」


こ、こいつ、腹黒い。


ってか日頃あたしに何か恨み持ってんだろ。



「亜美さんがおっしゃられたんですからね」


まぁたしかにそうなんだけどさ……



とりあえず佐伯さんは腹黒い。


父さんの前では猫かぶりもいいとこだ。

多分猫を四匹くらいは被ってるよ。


「あれだよね、佐伯さんはあたしが嫌いなんだね……」


そうだ、佐伯さんはあたしが嫌いなんだ。
だからあんなに冷たい仕打ちをするんだわ!
そのうち毒とか盛られたらどうするよ、自分。


「毒味……」


「亜美さん、私は別に亜美さんを嫌ってなどいません。ただちょっとうざがっているだけです」


そういうのを世間では“嫌い”っていうんだよ。



ってか正直すぎだろ。


「目は覚めましたか?」


「うん!ありがとう!」


正直、まだ頬は痛い。
でもそれのおかげで正気を保ってる。