それからは正直落ち着かなかった。


あの手帳を手放した事は無いに等しい。
それをたった1日でも赤の他人に預けるなんて前のあたしじゃ考えられない。


今だって信じられないくらいだ。


――でも大翔は絶対に持ってくる、会えるって言った。




だからあたしは大翔を信じるだけ。



今のあたしがしなければならないのは手帳の心配じゃくて、うだうだすることでもない。



目の前にある仕事を片付けること。



「よしっ!」


自分に気合いを入れるようにして、頬を叩いた。


でも自分では強く叩けないからあまり気合いが入らない。





あることを思いついた亜美は佐伯さんを探しに廊下に出た。


「……いたっ!」


ラッキーなことに佐伯さんはすぐに見つかった。


自分を指差して、何か大声で叫ぶ亜美を見て、いつも冷静な佐伯さんでさえもらだをビクッとさせた。


「……私に何かご用ですか?」


「あたしを殴って!」


「は?」


まぁそうなりますよね。


佐伯さんは完璧に驚いた顔をしている。