でもよく考えてみたら普通に言いそうだったからちょっとくやしい。
「一応、時と場合によってはマナーも守からね!」
このままでは深瀬の名が廃ると言わんばかりに否定する亜美に、みんなは笑った。
――楽しい
家族の旅行とは全然違うこの雰囲気。
それはまた違った楽しみがあるわけだ。
「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」
みんなそろって手を合わせる。
「おっふっろ」
楽しみすぎて言葉の間に“っ”がはいってしまう。
「一緒に入るか?」
大翔がニヤニヤしながら言った。
「うん」
「は?」
「うん」
「男湯だろ?」
「うん」
「だめだけりゃ。話し、聞いてねぇ」
亜美の思考は旅に出ていったまま。
誰からの呼び掛けにも“うん”としか答えなかった。
そして、ルンルンでスキップしながら陽たちの部屋から出ていった。
「……滑って転んで、頭打たねーかな?」
「やりそう」
大翔と大雅の会話なんて、全然耳に入らなかった。



