ぎちりと頭上で手首が鳴った。


それと共に、軋む手錠。


捕われの身も楽じゃない。



今が夜なのか昼なのか、何もわならない。

光の遮られたこの暗い部屋で、私は何時間過ごしたのだろうか。


「――姫、ご機嫌は如何かな」


キィ、と扉が軋んで、眩しい光と共に入って来る人影。

その形を確認し、私は当てつけのようにニタ、と笑った。


「おかげさまで上々よ。悪魔さん。」



「そりゃあ良かった。」





何が良かった、だ。


悪魔というのは強ち嘘では無いのだろう。



さらわれた時は自ら正体を明かす悪魔がいるものか、と鼻で笑ったのだけど。

暗闇に栄える赤い瞳と、真っ黒な髪が。