マスコミは大騒ぎだった。

火事で死亡していたとおもわれていた男性の遺体が発見されたこと。

その男性が握っていた拳銃からはやはり既に死亡しているはずの男性の妻の指紋が発見されたこと。

新聞やワイドショーでは様々な憶測が飛びかっている。

「タクちゃん、これくらいでいいかな?」

ユウが穴を掘る手休めてタクヤに尋ねる。

「そだな、これくらいかな。」

タクヤも手を休める。

二人は市内にある山の頂上付近で見晴らしのよい場所で穴を掘っていた。

「よし、じゃあ埋めるか。」

そう言ってタクヤが鞄から取り出したのは2つの発泡スチロールの箱だった。

事件のあとユウとタクヤは初めて依頼主の妻―山下智子の顔写真を見た。
また、山が好きだったということを知ったのだ。

発泡スチロールの箱と花束を穴 にいれ土をかけていく。
穴を埋め終わったあとユウがタクヤに尋ねる。

「でも、手首を勝手に埋めたりしていいのかな?」

「警察に回収されても解剖とかれたりするだけだろ。
俺たちが命の恩人である奥さんにやれることっていったら、大好きな山に埋めてあげるくらいだろ。」

そう言って、タクヤは手を合わせる。

「そうだね。」

ユウもタクヤと同じように手を合わせる。


山から見下ろす街はきれいに夕焼けに染まっていた。



終わり。