「さて、荷物を渡して貰おうか?」

後ろから男の声が響く。
タクヤは鞄から荷物を取り出し男に渡す。

「…お前、中を見たな?」

荷物のテープが剥がれているのを見て男が言ってくる。

「あれは、誰の手首なんだ?」

タクヤが質問をする。

「私の妻の手首だよ。」

男が答える。

「あんたは誰なんだ?
依頼人、山下孝則は既に死んだはずだ。」

タクヤはさらに質問を続ける。

「…そこまで知ってるのか。
私は山下孝則だよ。
あの火事で死んだのは私じゃない。」

男が答える。

「…え?」

タクヤが、疑問符を浮かべていると男がさらに続ける。

「私の妻は手はとても美しくてね、しかし、年と共にその美しさは失われてしまう。
それが私には許せなかった。
そこで私は閃めいたんだ、手だけを保存してやればいいと。
その為に火災を起こし、妻と私が死亡したように偽装した。
これで私は別人としてこの手とともに生きていける。」

「…狂ってる。」

タクヤが苦々しく呟いた。