「ほら」



司はハンカチを私に差し出した。



「ありがと……」



私は司からハンカチを受け取って、痛む頬をそっと抑えた。


司は壁によりかかりながらしゃがんで、私を見上げた。



「由香子さあ……」



「何よ」



「いや…別に」



司は何か言いたげだったけれど、口を片手で塞いで、視線を逸らせた。



「何よ。私が悪いわけじゃないんだからね」



「別になんも言ってねぇだろ?」



「嘘つかないでよ。私、嘘つかれるのが一番嫌い」



「……」



司はそれでも黙ったままだった。



「もういい」



私は司のハンカチを頬に当てたまま、司の元を離れた。