「最低女っ!!」



バチーン!


音とともに振り切られた手が目に飛び込んだ。

随分、思い切りひっぱたいたもんだ。

ビンタってさ、まず初めは、痛みよりも音にビックリするんだよね。


そんなことを冷静に考えながら、怒りに震える女の子から思いっきりひっぱたかれた、左側の頬をそっと抑えた。


頬に熱が帯びてきて、ジンジンと痛みに震えているのが徐々に分かった。



「彼氏いるの分かってて手出したんでしょ!?」



その言葉と共に、彼女はせきを切ったようにボロボロと泣き出した。



「別に。私は、彼を好きになったから好きって伝えただけ。自分に嘘をつかなかっただけ」



「っ……」



「……あんたが嫌なら、別にいいよ。次の人好きになればいいだけだし」



私はそう言って、呼び出された居心地の悪い屋上から立ち去った。