「それじゃあ、お疲れさま。みきやくん。」

「あ、はい。お疲れっす!」


手を敬礼の形にして、私よりちょっと遅くあがってきた彼に、すれ違いざま挨拶をする。挨拶は常識。最近の子は挨拶もできないのかって、父さん愚痴っていたけれど、こんな適当な挨拶を許さない世の中が悪いよねきっと。皆きっとそう。だって、人は殺しちゃいけないとか言うくせに、車に乗れば速度超過は当たり前だし、押しボタン式の信号なんて皆無視して渡ってる。同じく決められたルールなのに、どうしてこっちは守らないの?それって結局、自分の中で自分ルール作ってるってだけじゃん。鬱陶しい。だから私はこんな世界嫌い。


大分陽が落ちるのはやくなったなぁ。緩やかな坂を下っていく。両手をぷらぷらさせて。うわ、もしかして私、今頭悪そうなことしてない?なーんて。

居酒屋はコンビニから徒歩30分シフトは六時からだからあと1時間は余裕がある。どこかてきとーなところでマック食おマック。この前気づいたんだけど、ハンバーガー以外のハンバーガーって、モスと値段変わんないよね。私は断然モス派なんだけど、マックのあの塩味しかしないしなしなのポテトが結構好きなので、今日はそっちにするんだ。携帯を開く。誰からの連絡もないことを確認して、私は歩を早めた。