買い出しから帰った二人は、声を揃えてただいまと玄関を開けて小さく笑い合い、そのまま買ってきた食材をキッチンへと運びました。人参、ジャガイモ…各種材料をしっかり買い揃えてそして一旦床に腰を下ろしました。
「久々に来たけど、本当一人だと片付けないよねー」
彼女は笑って言いました。すぐさま彼は
「失礼な。ものが多いだけだよ」
彼はそう切り返しましたが、あまり説得力のある部屋ではありませんでした。けれど、その割合的に、衣服や生活用品が多く、彼女の興味を惹きませんでした。
「はいはい、片付けられない人は皆決まってそういうのよ。…それじゃあカレー作るから、貴方は片付けでもして待っていて。」
彼女の皮肉さえも、今の彼には心地よく響きます。そうして各々自分の作業を始めました。
「はい、お待たせ。カレー、出来たよ」
いつの間にか片付けに没頭していた彼はその声で我に返ると、いい匂いが部屋中を満たしていることを認識しました。
「おぉ、もう出来たんだ。すっかり片付けに集中していたよ」
「ふふ、えらいえらい、じゃあこのカレーは頑張ったご褒美ってことで。」
カレーを二人分テーブルに並べて向かい側に座る彼女の笑顔は、もう先程までのぎこちない笑顔などではなく、いつもの、彼女の優しい笑顔でした。
彼女の作るカレーが、彼は好きでした。
なによりも、彼女を彼は愛していました。
それを今、思い出したのです。


