二人並んで歩く帰り道。手を繋いでそこらをほいほい歩けるほど、彼の心は若くはないので、肩を並べて。


不意に、彼女が身を乗り出して、こちらを覗き込むように提案してきます。

「折角だし、今日は何か私が作るよ。何かリクエストは?」


彼は少し考え、答えました。


「カレー…は、時間掛かっちゃうかな?」


戸惑い気味の彼に、彼女はゆっくり首を横に振り、


「ううん。お邪魔でないなら。今日は…大丈夫だから」


彼女は優しく笑みを浮かべて彼にそう告げました。彼には、彼女が嘘をついていることがわかったのですが、今までの彼女への対応が罪悪感となり、とうとうそれを指摘することが出来ませんでした。


「…大丈夫だよ。じゃあ久しぶりだし、ご馳走になろうかな。」


「うん、まかせて。カレーは得意だから。」


自身の腕をがしっと振り上げ二の腕のあたりをつかみ、自信たっぷりに彼女は宣言しました。彼は、事実彼女が料理上手であることを知っているので、張り切る彼女を見て漸く緊張が解けてきました。笑みが少し、柔らかくなったように感じます。

「それじゃ、買出しだね。まだ、そこのスーパーやってるかなぁ」

彼女は気持ちはしゃいでるように彼には見えました。
そしてその後をゆっくりと追いかけていくのでした。