ワンルームの、照明が橙色をしているマンションの一室。静かにパソコンと向き合う背中が見えます。彼は、手元に湯気のたたなくなったオニオンスープを置いて、ただパソコンと向き合うのです。

今は昼時。今日の天気はお日様が久しぶりに顔を出して、元気よく空を照らしていました。それに映える青色が、世界は今日もいつもと同じです、っと告げているようで、なんだか嬉しくなってしまいます。カーテンを開いたりしませんから、彼がそんなことを思うことはないのでしょうが。


彼は、仕事をしているのでした。昔から部屋に引きこもって作業をしていた甲斐もあり、馴れた手つきで虚空を見ています。


オニオンスープは、青色のマグカップにまだ半分以上残っているのでした。



ジリリリリリリリリ。いつも彼の起きる時間に、それは鳴り響きました。違う世界へと旅に出ていた彼も、いったんこの世界に帰ってきて、数時間ぶりに椅子から立ち上がりそれを止めようと手を伸ばしました。



ジリリリリリリリリ------。


彼の手によって、それは音を出すのを止めます。立ち上がった彼はそれを元の位置に戻していつのまにか凝り固まってしまった腰をう~んと大きく伸ばして、背伸びをします。


ぼんやりと、俺も大きくなったなぁ、と感慨深く、また少し儚げに彼は思いました。



夏が終わって直ぐの、まだまだ残暑長引く九月から、この物語は始まります。