礼は猫から目が離せなかった。



驚いたから、だけではない。



このまま猫を逃したくなかった。



「あぁ、とうとう…
あたしを迎えに来てくれたのね。」



猫はピクリと髭を動かした。



変なものでも見るような目つきで、礼の様子を窺う。



―とうとう来たんだわ。
私の世界に。



礼は、ここが本当の居場所だと確信した。



ずっと孤独だった世界から逃れて。



礼の異常で予想外の反応に、猫はぼやく。



「何じゃお前。
つまらん。」



猫はそっぽを向くと、耳を掻いた。