夜だというのに明るい。
ぽっかりと、夜空に穴を開けたような満月が出ていた。
「今日に限って満月とは…」
老人は溜め息混じりに呟いた。
「なに、私が気をつければよいだけのこと。
これ以上、民たちを苦しめるわけにはいくまい。」
青年は、苦い笑みを浮かべた。
自分の言葉に矛盾を感じたからだ。
月光とその表情が相まって、青年の妖艶な姿を映し出す。
青年の影は、明らかに人ではなかった。
飛ぶためであろうものが、月と張り合うように存在を強調している。
青年は、老人に下がるよう命じた。
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