腹が立つ。



鳥さえも“私を見ずに”、糞を落とした。



―あぁ。結局あいつらは、鳥と同じなのね。
私が目に映らない凡人ども。



そんなことを考えている間に、烏は目前まで迫っていた。



もう怒りはない。



あるのは呆れだった。



礼は、くらりと反射的によけた。



―あの烏は、“私を見ている”。



礼は、避けた拍子に歩道の段差を踏み外してしまった。



ぐらりと視界が傾く。



そして、目にした。



薄紫色の空が、綺麗な満月に支配されているのを。



同時に、光の波が押し寄せてきた。