しばらくして籠が止まった。



お尻に地面の感触が伝わると、簾が上げられた。



何かを煮込む匂いが鼻をくすぐる。



籠から降りると、横にだだっ広い建物が建っていた。



あちらこちらの窓から煙が出ている。



その煙は礼の鼻を通っては、食欲を誘った。



「ここは庖厨殿、彼は庖厨長でございます。」



石畳の道には、平伏した官たちが張り付いていた。



東苑が先頭に座る中年の男を紹介する。



ここ庖厨殿は、言わば宮中の台所である。



食料の貯蔵庫としての役割も果たしていた。



男は顔をあげると、礼を見て微笑んだ。



小柄だが膂力のある腕に、白い髭が印象的だ。