それでも、東老師に会った礼は早々に愚痴をぶちまけた。



「楊震は来ないし、平当は反発ばっかりだし、金大好は悪だくみするし。
はぁ、ほんっと穴だらけ。」



「まだ考える時間はございます。
主上は、どうすればできるだけ多くの者を掌に乗せられるかをお考えなさい。」



使えないものも乗せてどうする、と内心思ったが、わかったと返答した。



東老師の教えは、いつも先を見ている。



きっと、自分にはまだ理解できないことなのだろう。



それより、東師老に会わせたいと言わせる人物の方が、礼の興味を引いた。



「東老師が会わせたい人物とは、如何様な?」



「この赤宮で働く者たちです。
裏の仕事ゆえに、主上も知らぬことが多いと思いまして。
けれど、彼らの信頼を欠いてはこの赤宮も崩れる。
そういう者たちでございます。」



礼の予想とは大分違っていたが、それはそれで興味が湧いたのでよいと思った。



「それと…」



「何だ?」



東老師が急にいい辛そうな顔になる。



「もう一人、主上に会いたいと申す者がおりまして…」



「別によいが、なぜそんなにいやそうなのだ?」



「ちょっとかぶき者で。」



「変わり者なのか?」



「まぁ…」



珍しく歯切れの悪い東老師であった。