pain〜約束の梯子〜




「ハル、大丈夫か?」



電車から降りた直後に同じクラスの小田が駆け寄ってきた。

電車で痴漢行為されるのなんて、これが初めてじゃない。

その事を小田は知っていた。

この小田って奴は、多分家族なんかより僕の人間性を理解していると思われるクラスメート。

与えられたシールド内だけで無闇に作り上げた信頼関係だけど、それは僕だけに限らず普遍的な事。

本当の僕を知っている奴なんて、存在しない。



「平気だよ。もう慣れたし。」
「なんで何も言わねーんだよ」

僕は無機質に笑って誤魔化す。
なんでって…
あの感じを抑えているからだよ。

僕が恐れている
僕自身の感情を。