彼女は人間管理人。

 僕の悲鳴に女ははっとして後ずさった。



 両手が自由になった僕は、溢れる生暖かいものを拭う。

 それから胃の中身を吐き出すのをやっとでこらえる。



『罪を背負うべきなのは、あんたじゃないか』



 僕はなんで、あんなことを云った?




「美戯……みぎ、あぁ、美戯」


 女は頭を抱えている。

 そしてしきりに僕の名前を呼ぶ、呼ぶ。



 彼女はまだ僕を引きずり込もうとしているのだ。


 罪でできた湖に。



「自殺なんて、貴方には出来ないわ……みぎ、美戯」



 嗚咽と涙に紛れた僕を影が覆い被さる。


 見上げると、女が目の前に立っていた。




 その右手には、包丁。