「あ、ハンカチありがとうございました」
鞄の中からハンカチを出す。
こまめに洗ってアイロンもきちんとかけていた。
皺一つないハンカチを見て、雪夜さんはまた目を見開く。
「忘れてたわ……。そうね、貸したのよね」
「はい。すぐに返せなくてすいませんでした」
「いいわよ。出張でこっちに出てたのよ」
「出張……」
なるほど、会えなかったわけだ。
ハンカチを雪夜さんに渡すとき、いきなり寂しくなった。
このハンカチを返せば雪夜さんとの接点はなくなってしまう。
だが、今さらやっぱり返せませんなんか言ったら、怪しすぎる。
ハンカチを受けとった後、雪夜さんは唐突にこう言った。
「お腹空いてない?」
「へ?」
「私お腹空いてるの。一人で食べるのもなんだし、ちょっと付き合ってよ」
「別にいいっすけど……俺金あんまないっすよ?」
「大丈夫大丈夫、私が払うから!」

