春夏秋冬物語

「聞かない方がいいぞ」
「二百%ノロケだからな」
「おいニノ、嘘つくな。振り切れてんじゃねえか」
「事実だろ?」
「二百%嘘だ」
「くそ、使い回ししやがった」

本当に何だコイツら。
せっかく人が話してやったというのに。

「ノロケでもいいよ」
「ノロケじゃねえっつったろうが。あれは俺が十歳の頃―――」

話してやると、稔は目をキラキラ輝かせた。

「いい話だね! 僕じーんと来たよ」
「あの話で感動するなら俺の初恋は号泣だな」
「あの話たァなんだ」
「ナンパしたのに連絡先聞き忘れて結局会えなくて挫折した話」
「お前の頭の中ではそういう変換されてんの!?」
「これ以外にどう表せっていうんだ」

本気で佐久原を殴ろうかと思った。
別にいいよな?
ここまで言われちゃ殴ったっていいよな?

「殴ったら半殺しだぞ」
「すいませんごめんなさい謝りますから殺さないで下さいお願いします何でもしますから本当にすいませんでした」

即座に土下座した。
佐久原は空手黒帯だから、逆らったらマジ怖い。
絶対手を上げないのは分かってるけど、でも怖いもんは怖い。