ぁ、この間奈桜に借りた本返しにいこーっと。

 「…だろ!?」

 ん?

 五人の争う声。

 また喧嘩かな?

 こっそりと部屋を覗く。

 「俺は、引かねぇぞ」

 陸玖?

 「僕だって!」

 悠羽?

 「一番引いてるのは、奈桜だよな」

 何を引いてるの?

 「だって僕は、奪い合いなんてしたくない。
それに決めるのは、璃音じゃないか」

 私の話?

 「だから選んでもらえるように頑張るんだろ?」

 契約の話かな…。

 「でも…」

 「俺たち選ばれなきゃ里親行きだぞ!?」

 「それは、嫌だけど…」

 里親…?

 「あんな家二度と帰るか!そのためには選ばれる必要があるんだよ」

 私は、みんなの帰りたくない家に帰らないようにするための道具…?

 ボトッ。

 奈桜に借りた本を落としてしまった。

 「え?」

 五人が振り返った。

 「は、、はは…」

 苦笑いをする私。

 耐えきれなくなった私は、神山家から飛び出した。



 「私なんか…やっぱり」

 「また…泣いてるの…?」