彼らにもともちゃんの声が聞こえたようで、痛いくらいの視線を感じるけれど。
当のともちゃんはどこ吹く風。気にもしていない。
サクサクとポッキーを食べ進める音だけが、いったいに響く。動けないのはあたしと、--彼らだけ。

静寂を最初に破ったのはあちら。カップルの女の方がカツカツとヒールを鳴らして近寄ってくるものだからあたしは余計に縮こまる。



「あなた、」



その声が聞こえて、あたしは心臓を握られたような錯覚を覚えた。
どう、しよう。怒られちゃう。



「そうよね。彼女を家に入れないなんておかしいと思うよね、ほらアッキー。女子高生もそう言ってる」



その人はともちゃんの手を取って興奮するように声を上げた。

怒られる、とあたしはぎゅっと目をつぶっていた。おずおずと近づいてきた彼女を視界にいれると、2人は興奮している。
たぶん、波長が合ってるんだと思う。

あたしと男をそっちのけでホームに滑り込んだ電車に2人乗って行った。
「アッキーなんてもう知らない」「そうだそうだっ」なんて捨てぜりふを残して。


ともちゃんまで……、って男の人は怒ってるだろうな、と思って隣に立つ人の顔を見上げることが出来なかった。