──やっぱり!

 視界に白い姿を認めるや否や、翠玉は房に戻り予め鍵を外しておいた雨戸を開け放つ。

「待って! 待ってください──耳飾を探しているのでしょう!?」

 音に気づいて即座に逃げ出そうとする人影に向かって、小声で、しかし鋭く呼びかけた。

 ゆっくりと振り返る女の姿に息を呑む。

 人ならぬものではないかと圧倒されるほどの存在感を、その人は持っていた。

 翠玉は自分を叱咤すると、意志の力を振り絞って問いを重ねた。

「ご無礼を承知で申し上げます。──貴方、碩有様のお母君の季鴬様ではありませんか?」