初めての恋

「やっぱ交換な。元々こっちが麗のだし…」

「どうして?透が持っている私のには、大切な記念日入ったハート型の……」


「麗、じぁな。最後に握手だ!」


そう言って透は麗の手を握りしめた。強く握りしめた暖かな透の、大きな手…離したくない…


透は離した手をポケットにしまうと


「麗、幸せになれよ。じぁな。バイバイ」


と小走りで行ってしまった。


涙があふれて止まらなかった。左手に握りしめたストラップが、とても冷たく感じた。


透は次の日から学校に来ていなかった。引っ越しの準備で忙しかったのかもしれない。その次の日も透は学校に来ていなかった。


帰り道、麗は透の家の前を通ってみた。透の家はすでに空き家になっていた。黙って透の家の玄関に立たずんでいると、隣の家の人が出てきて

「麗…さん?」


と聞かれ、こくりとうなずいた。

「透君の家、お父さんの都合で、今朝九州に引っ越して行ったんだよ。透君が、麗さんて子が必ず来るはずだから、これ渡してほしいって頼まれてて…


と紙袋を渡してくれた。麗はお礼を言うと、家に戻り、紙袋の中を見てみた。


ビニールに入った麗のために買ってくれたクッションと、麗宛の手紙だった。