【side 公香】
啌君が来てくれた時、ホントに嬉しかったんだ。
汗だくになって、我を失ってまで男の人と喧嘩してくれた。
それって、私の為だよね?
だけど、里香子ちゃんを責めている啌君を見て
なんだか、悲しくなった。
私の知らない、啌君の過去がたくさんあるって思ったから。
怖かったけど……震えてたけど……びちょびちょだったけど……
何より、それが一番辛かったんだ。
啌君は私を抱き締めて、頭をさすっている間、ずっと謝り続けてた。
申し訳なさそうに、まるで蚊が泣くような声で、何度も何度も。
大丈夫だから、啌君。
私は啌君を責めたりなんてしないから。
啌君が悪い訳じゃないから。
そう言いたかったのに、
上手く声にならなかったんだ。

