「一口なんてゆっくりもくそもねぇだろ」


「あたしにとってはゆっくりもくそもあるの!」


「あ~そうかい。それは悪かったね」


そう言って颯はあたしより少し前を歩きだした。


チキショ―…


ショコラちゃんだって今日あたしに食べられる日を待ちわびていただろうに…


なのに颯は…よりによって最後の一口であんな事を…


「颯の馬鹿」


「はいはい」


「颯の馬鹿」


「はいはい」


「颯の馬鹿」


「…はいはい」


「颯の馬鹿」


「……はいはい」


「颯の―――…」


「しつけぇよ!何回言えば気が済むんだお前は!」


そう言って颯が立ち止まってあたしの方に振り向いた。


「後50回」


「多いんだよ!せめて3回とかにしろよ」


「ねぇ」


「んだよ!」


「しっかり者の颯がそんなに乱心しちゃうとあたしの天然を止める人がいなくなっちゃう。小説としてそれはどうかと思う」