卒業生のあふれかえる昇降口で、私は先輩の姿を探した。
別れを惜しんで泣き合う卒業生たちの間をくぐって目を凝らす。
そして、見つけた。
「早瀬川先輩ッ!」
もう見失わないように、先輩の制服の裾を掴む。
「……?どうしたの?」
初めて見る顔だからだと思う。私を見る先輩の顔は、不思議そうな顔をしていた。
私、今、初めて先輩に見られた……!
「…って今そんなこといいの!先輩、ちょっとこっちきてください!」
「? う、うん」
後ろで先輩の友達が「青春だねぇ」と冷やかしているが無視して歩いた。
私は人がいないところで止まった。
「…で、俺に何の用?」
先輩は微笑んでこっちを見た。私は先輩と向き合ってまっすぐ目を見つめて、
「わ、私……」
しゃべり始める。
でも、いざとなるとやっぱりダメだ。
「わ、たし……」
そのとき思い出した、和子の言葉。
『…がんばってね』
最後の一押しの言葉。
私を歩ませたその言葉が、胸の奥まで染み渡る。
和子。
私、がんばるから。
…ありがとう。
「私、先輩のこと…ずっと…ずっとッ、大好きでしたッ!!」
ちょっとの勇気。
それが、私を変えて。
私に、勇気をくれる………!
先輩に思い、伝えたよ……。