「とにかく、ありがたい…!」
「とりあえずお風呂沸かす!あと、洗濯回す!」
「そ、そうだね」
電気復旧。家事仕事が生活に戻ってきたお母さんは、久しぶりの電気よりも輝いて見えた………気がした。
お風呂が沸くまでの間、私はテレビをつけた。
つけた瞬間、画面に映ったのは、宮城県の津波被害にあったところの悲惨な状況。
家が海のほうに何件も流されている…。
「酷い…」
地震による被害は津波や原発だけじゃないようだった。
何件もの火災、交通機関の停止……。他にも、説明しきれないくらい。
世の中への被害は、予想以上だった。
「………」
和子、大丈夫かな…。
そうだ。
和子に電話をかけようと思って、ケータイを手にする。
けど。
「……ケンカ中なんだよね…一応…」
そう思うと、かけづらい。
ボタンを押そうとした指が止まった。
「………」
あんなに心配してたはずだったのに……。
いざとなるとできない私は、意気地無しで、小心者。
私はそのままケータイをしまった。
「遥ー、お風呂湧いたよー。入る?」
「……うん」
ちょうどいいタイミングだったから、私は今のことを洗い流すかのように二日ぶりのお風呂に入った。