あたしの愛、幾らで買いますか?

あたしは何のためらいもなく

包丁を左手首に当てた。

後は、

スッと右手をスライドさせるだけだった。


その瞬間、

あたしの耳元で声が聞こえた気がした。


―ダメだ!


朔羅の声ではなかった。

彼の声を聞き間違えるはずがなかった。

だけど、

懐かしい声だった。


「…だれ?」


この家にはあたししか居ないのに

あたしは辺りを見渡す。

誰も居ない事、わかりきっているのに。


幻聴?

遂にあたしも狂ったか。

あたしは、包丁を置かずに

包丁の刃の先を手首から

別な場所へ移動した。



スッと軽くあたしは右手を動かした。

小指に薄っすらと滲む血。

これ位は許されるよね?


赤い糸は

小指に繋がってるんでしょう?

それと何も変わらないよ。