あたしの愛、幾らで買いますか?

その声で誰だかすぐにわかった。

笹井だ。

だけど、

笹井は一人じゃなかった。


「歩美!」


エリも一緒だった。

エリは店の中なのに大きな声で

あたしを呼んだ。

大きめのアーモンド形の瞳には

薄っすらと涙が溜まっていた。


「久し振り」


あたしは目の前に座る二人に

笑顔で言った。


「エリも一緒だったんだね」

「うん。
 笹井がそそくさと教室から
 出ようとしてたから、
 問い詰めたら
 歩美が戻ってきてるって…
 だから、ついて来ちゃった。
 ダメだった?」

「あいつにバレたら面倒だろう?」


笹井の言う‘あいつ’が

誰を指しているのかすぐにわかった。


「面倒って…
 愛がないね」


あたしが、笑うと笹井はポツリと言った。


「だって、付き合うったって
 カタチだけだし。
 俺、元から好きじゃねぇし」


笹井の言っている意味が

よくわからなかった。