あたしの愛、幾らで買いますか?

突如、デニムのポケットで震える携帯。

その所為で、少しバランスを崩して

転びそうになったけど

なんとか体勢を立て直した。

気が付いたら、小さく舌打ちをしていた。


長く震える携帯。

震え方からして朔羅ではない。

振動パターンが違うのだ。


「もしもし?」


誰からの着信なのか確かめずに

通話ボタンを押す。


『何キレてんだよ』


携帯電話の向こう側で電話の主が

ケラケラと笑っている。


「今、外歩いてるの。
 滑るの。
 本当に、空気読んで」

『安藤、お前なぁ…』

「何?」

『天気に罪はねぇだろうに』

「黙れ、笹井」


久々に聞く笹井の声は

落ち着くけれど、

無性にイライラとした。


多分、

百合子のモノだから。


あたしは、ムカつきついでに

喋っている途中の笹井を無視して

電話を切った。