あたしの愛、幾らで買いますか?

朔羅は仕事中なのだろう。

返事はすぐに来なかった。

来るとも思えないけれど…

彼の仕事は、

いつでも連絡が取れる訳ではないのだ。


時間はゆっくりと過ぎる。

でも、確かに一秒一秒

時間は刻まれる。


「歩美?
 7時だけど…
 本当にご飯いいの?」

「いいの。
 彼と食べるって決めたんだから」


母は呆れたように溜め息をついて

あたしにルーズリーフの束を手渡した。


「ママ…
 何これ?」

「ママの味のレシピ」

「…え?」


母の顔には

春の木漏れ日みたいな

優しい表情が浮かぶ。

その表情は

あたしが小さな頃に

見た事があるような気がした。


「ほら、
 料理本のレシピも良いけど
 たまには家庭っぽいのも
 彼に食べさせてあげなさいよ」


今日のあたしは、どうかしてる。

涙腺が壊れてる。

特別温かい言葉じゃないのに

目頭が熱い。


「うん…
 そうだね」


あたしは涙を堪える事に精一杯で

それしか言えなかった。