あたしの愛、幾らで買いますか?

玄関で少しだけ固まる、あたし。

‘ただいま’と言う前に母親は

あたしの目の前に居た。


「…おかえり」


母親の表情に少し戸惑った。

目に涙を浮かべ、

だけど、

怒りが込み上げているような表情だった。

心配なんてされていないと思っていた。


―パンッ


あたしの左頬に衝撃が走る。

母親の右手があたしの左頬を打ったのだ。

父親より遥かに痛くは無かったけど

少し頬がジンジンとする。

母親を睨みつけようと思ったけど

出来なかった。


「もう…
 どれだけ心配したと思ってるのよ…。
 家に居たくないなら、それでも良い。
 だけど…」


母親は泣きながらあたしを抱き締め

時折、鼻をすすり

途切れ途切れだけど、言葉を続けた。


「だけど、
 連絡だけはして頂戴。
 歩美が元気だって解れば
 ママ…
 それだけでいいから」


ねぇ、

あたし要らないんじゃなかったの?