あたしの愛、幾らで買いますか?

今なら、家には母親だけいるだろう。

父親には会いたくなかった。

何を言われるかわからないから。


あたしは水っぽい雪の中を歩く。

爪先は感覚がなくなる位

冷たくなっていたけれど

我慢できるくらいだった。


手もすっかり冷え切った頃、

やっと見えてきた。

久し振りに見る古びたアパート。

家族3人が暮らすのが、

やっとの間取りの我が家。


あたしは階段を登り表札の無い

自宅の扉の前に立つ。

久々の扉で少しだけ緊張している。

どんな顔をして

親に会えばいいかわからないから

少しだけ緊張している。


―カチャ


鍵のかかっていない無防備な家。

これは母親がいる証拠だった。


「歩美?」


あたしは何も声を出していないのに

居間として使っている部屋から

母親の声が聞こえた。