あたしの愛、幾らで買いますか?

彼は百合子の正面に浅く気だるそうに

椅子に座り、外を眺めている。

彼には百合子の問い掛けが

耳に届いていないようだ。


「ねぇねぇ…
 聞いてる?」


百合子は机に肘をついて

頬杖をしている。

そして、ぷぅっと頬を膨らます。

たぶん、自分で可愛いと思って

やっているのだろう。

確かに、顔は美人だと思うけど。


「え?
 …あぁ~」

「聞いてなかったのぉ?」

「ごめん…」


彼は無理矢理笑ってみせた。

それは、

百合子へと向かって。


あたしは自分の席へついて

カバンを右のフックのところにかける。

携帯を取り出して

朔羅からのメールをチェックする。

返事は、まだ来ていなかった。