あたしの愛、幾らで買いますか?

―PPPPP…


朝、アラームとは違う音で

あたしは目覚めた。

寝起きは悪くない方だけど、

季節は冬に限りなく近付いてきた。

布団から出るのも至難の技。


あたしの携帯の着信は、

相変わらず無機質な音。

ただ、夏と違う事は

朔羅だけは違うパターンの

着信音。

流行の‘着うた’とか

ヒット曲ではないけれど、

あたしだけわかる。

画面を見なくても彼からの電話だと。


寝起きの声だなんて思われたくなくて、

あたしは通話ボタンを押す前に、

咳払いをする。


「もしもし」

『おはよう。あゆ』

「おはよう」

『起きてた?』

「今、起きた!」

『そっか』


あたしの大好きな朔羅の優しい声。

暖かい彼の声。

優しい陽だまりみたいな声。


「今日、仕事は?」

『ん?』

「ないの?」

『あるよ。
 今日は午後から』

「そうなんだ…」