あたしの愛、幾らで買いますか?

あたしは携帯を握り締めながら

家へと向かう。


玄関を開けて、居間を見る。

誰もいない…。

少しだけ安心した。

父親が居たら、

きっと殴られるに違いない。

母親もいない。


「…あれ?」


無断で外泊したはずなのに、

家族が団欒をするはずのテーブルに

メモがおいてあった。


‘おはよう。歩美。
 学校から帰ってきていたら
 おかえりかな?’


まるで手紙のような書き出し。

母親の綺麗で流れるような文字が

少しだけ胸をキュッとさせる。


‘ママは夕方まで出かけています。
 食べ物は冷蔵庫にあります’


母親が、あたしに伝えたかった事は

最後の2行だけだろう。

最初の書き出しは何で書いていたのかな。

怒っていないのかな?

心配しなかったのかな…