あたしの愛、幾らで買いますか?

笹井は優しく、

毛布のようにふわりと抱き締めてくれた。

彼は何があったかなんて

もう聞くことはなかった。


あたしは、

何も出来なくて、

ただ、笹井の腕の中で泣いた。

笹井は何も言わない。

ただ、優しく抱き締めてくれた。


「…なぁ?」


何台もの車が通り過ぎていく中で

やっぱり笹井が沈黙を破る。

あたしの涙は簡単には止まらない。


「安藤?
 うち来るか?」


あたしは、それに頷いて答えるだけ。

笹井は着ているTシャツで

あたしの涙を拭いてくれた。

ちっとも優しくない拭き方で

あたしは思わず


「ぶっ」


と声を漏らす。

彼は、それを聞いて

ゲラゲラと笑うだけ。