あたしの愛、幾らで買いますか?

あたしは、運転席の彼の横顔や笑顔を

しっかりと焼き付けて

家までの道のりを歩く。


細い路地に入ってしまったら、

大通りを走る車の音は

遠くで聞こえる程度。


あたしの黒い革靴の音が鳴り響く。

カバンの中で、

無機質な音が携帯から流れる。

メールだったら5秒くらいで切れるから

電話だろう。


「…?」


携帯のサブディスプレイには

数字が並んでいるだけだった。

そう。

メモリ登録していない人から…


誰だろう?


あたしは少し不審に思いながら

通話ボタンを押す。


「もしもし?」


少しだけ強気な口調。


『……』


電話の相手は無言。

ただ、息の音は聞こえる。


「誰?」


苛立ちながら強く言う。

そして、やっと相手の声が聞こえた。