蒼い林檎【短篇】


―結婚しよう…




その彼の言葉に、
つき通す嘘も、真実も口に出来ない私は、彼に与える事が出来た一つの愛情の行方を確かめる事が怖かった
…わかってた事でしょう?

それなら、
私が今後持つことはないと分かりながらも、その時間を切り取ってしまう事を選ぶ


初めて彼の何かに惹かれたこのBarも、その時間の中に入っている

一人カウンターに腰かけ、
全てを切り取ってしまう為にオーダーしたマティーニ…

―ドライは嫌よ、少し甘目に作ってよね

無理に作る笑顔に、バーテンダーは小さく、優しく頷いた


差し出されたカクテルグラスは同じ…
でも中味はまるで違う
いや…違うけど、

―こっちの方が、ずっとドライだな…