そこに立って居るのは、紛れも無く、私のお兄ちゃん。


ただそれが何だか現実味を帯びないのは、彼が、小さな黄色や赤の花が気持ち悪いくらいに散りばめられた膝丈のスカートを着て、大きなリボンをあしらった箱を両腕で抱えているからである、うん、そうだ。


もう一度言うけど、彼、わたしのおにいちゃん。



「ふぅ、ただいまぁ」


お兄ちゃんは待っていた箱(掛けられたフリフリのリボンがなんだかイライラする)を机に、よいしょっと置き、そして箱を開け出した。


「何それ?」

私はそれを横目で見ながら聞く。

お兄ちゃんは「ふふ、これね~」とガサゴソしながら何かを取り出し、満面の笑みで


「ケーキぃ」

と、猫撫で声で言った。
(あぁ、そのしゃべり方。どうにかしてくれ。)


「なんでケーキ?誰かの誕生日だっけ?」


「ううん。駅前に新しいケーキ屋さんが出来てたからねぇ」


あぁ。まさに心も乙女ですね、お兄ちゃん。


「そ、そう…」


私は、宝石でも見る様なキラキラした目でケーキに見入るお兄ちゃんの横を通り、階段を登ろうとし、



ガッチャァァアン!!!!!!!!


………。


あー、まただ。


私とお兄ちゃんは顔を見合わせ、そして、天井を見上げた。