そのとき。遠い昔に母から言われた言葉を、私は思い出していた。


『お兄ちゃんがあんなだから、あんたがしっかりしなきゃダメよ。』

母は私の肩を揺らしながら、強く言う。


そう。全ては最初から間違っていた。


ぼんやりと窓の外を眺める。

今日は快晴。


清々しい空の青、雲の白。


、とその時。

物思いにふける私の背後で、おんぼろの玄関がガチャリと開く音。


そこに立っているのは…


「ただいまー!」


…私の、お兄ちゃん。