empty box

僕が玄関に横になってどれくらいたったか分からなかったが、部屋に響いたチャイムの音で、遠のいていた意識が戻ってきた。外からは圭吾の声と篠瀬さんの声が聞こえて、起き上がろうとすると意識より少し遅れて、胸の痛みの感覚も戻ってきた。
「あ…や…」
息をするのが精一杯で、出した声はあまりに非力で、自分の耳に届くのがやっとだった。
目の前にある靴箱の上には今朝忘れていった水筒が置いてあるのを見つけた。
身をよじって少し揺らすと安物の靴箱は簡単に揺れて、上に置いてある水筒はあっけなく床に落ちた。
数秒で鍵のしまっていないドアはためらいがちに数センチ開き、そして一気に開かれた。
光の入ってこない暗い玄関にまぶしいぐらいの光がさしこんだ。