一人暮らしのアパートの僕の郵便受けには大したものは入ってなくて、請求書とくだらないDMをぬれた手でつかむと、2階までテンポよく階段を上り角部屋の鍵を開け玄関に入る。
風が強くて、少し重いドアが勢いよくしまった。
いつもの音、いつもの事なのに雪の中の静寂になれた僕の耳には、ひどく響きわたった。
びくっと震えた僕の体は、5秒たっても震えが止まらず、息を吸うたび胸が締め付けられるような痛みを発した。僕は靴も脱げず、玄関でうずくまる。安いアパートの玄関は広くもなく、申し訳程度の段差に腰から落ちるように横になった。床が冷たくて、まだ、自分の体が温かい事に気付いて少しだけ安心した。